鈴木 淳士

Atsushi Suzuki

公益社団法人 塩釜青年会議所 第50代理事長

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IMAGINATION

「想像しよう!二市三町(ふるさと)の明るい未来」

はじめに

 私たちの活動するエリアには歴史や文化、伝統、豊かな自然風景、食といった多くの魅力が溢れています。塩竈市は三陸塩竈ひがしものをはじめとする豊富な水産資源で知られ、多賀城市は昨年創建1300年を迎えた東北の歴史都市です。七ヶ浜町では海苔の生産で有名であり、菖蒲田浜海水浴場等の観光スポットには多くの人が訪れます。また、日本三景の一つである松島町は、世界中から観光客を引き寄せる景勝地であり、利府町は宮城県総合運動公園や、名産の梨が地域を代表しています。私たちはこれらの二市三町の持つ地域資源を持続可能な形で活用し、次世代に繋げていかなければなりません。

 塩釜青年会議所は県内9番目の青年会議所として、1975年9月24日に発足し、翌1976年6月6日に全国594番目のLOMとして日本青年会議所に承認されました。より良い地域の実現を目指した先輩方によって立ち上げられたこの組織は、その時代によって地域の抱える問題と課題を解決すべく多くの運動を展開してきました。

 私が入会したのは2016年の27歳の時でした。当時は青年会議所の名前も活動内容も知らず、特に大きな志もないまま誘われるままに入会を決めました。仕事に追われ地域のことや見ず知らずの子どもたちのことを考える余裕など全くありませんでした。しかし、活動する先輩方の背中を仲間と共に追いかけ続ける中で、入会当初は蜘蛛の糸のように細かった地域への想いは少しずつ太く縒られていきました。地域を想い、子どもたちの笑顔が溢れる未来の実現を仲間と共に目指し挑戦し続ける。それこそが私たち青年世代一人ひとりに重要なのだと学びました。本年も私たち塩釜青年会議所のメンバー一人ひとりが、まちとひと、そして自分自身の明るい未来を創造する運動を展開し、地域や市民の皆様と共に歩みを進めてまいります。

JCの本質を伝える会員拡大

 青年会議所は20歳から40歳までの限られた期間のみ所属できる団体ですが、卒業までの期間が定められているからこそ、常に組織の新陳代謝が図られ時代に即した運動の展開に繋がります。しかし、近年は全国的にも会員の減少と所属年数の短期化が問題視されており、塩釜青年会議所においても会員数の減少は今後の会の運営に大きな問題となっています。なかでも卒業を迎える前に退会してしまう会員の存在は重大な課題です。

 青年会議所とはどのような団体で、そこで得られる経験や価値をしっかりと伝える共感型の拡大がこれまで以上に重要です。実際に活動する私たちが青年会議所で体験したものや得たものを共有し、地域の若者に魅力を伝えることで、新たな仲間は増えていきます。そして、私たち一人ひとりが積極的に活動を通してその背中を新たな仲間に見せるとともに、彼らの立場や考えを理解し寄り添うことで、今後の地域を担う未来のリーダーが増えていきます。青年会議所でしか得られない経験、仲間づくり、そして自己成長の機会をまだ見ぬ同志に一人ひとりが伝え、新たなメンバーと共に運動を展開してまいりましょう。

地域を想い形にするまちづくり

 全国的にも人口減少や高齢化していく社会が問題とされていますが、それはまちの魅力が失われ衰退していくということなのでしょうか。それは違います。まちは単なる建物群や道路の集合ではなく、ひとが集まり形成しているコミュニティです。その地域が持つ魅力を誇り、地域を愛するひとが増えれば、新たな魅力が生まれ、まちは活性化していきます。地域の明るい未来を想い描けるひとづくりを通したまちづくりが必要です。

 私たちの活動エリアには先達から紡がれてきた多くの事業が市民の皆様に愛され根付いています。その一つが1989年より続いている塩竈みなと祭陸上パレードです。本年で第78回を迎える塩竈みなと祭は戦後の塩竈市の復興と発展を願い、1948年に始まりました。まちの活性化を目的に始まった祭りは現在でも市民の郷土愛を育み、共に行うまちづくりの重要な一環となっています。本年も先人たちより受け継いできた想いを時代に合わせた形に昇華し、明るい未来を想像できる陸上パレードを市民の皆様と共に作り上げてまいります。

 私たちはより良いまちの実現を目指し活動していますが、「良いまち」とはどのようなものなのでしょうか。そこには人それぞれの価値観や考えがあり一つの答えがあるものではありません。私の考える良いまちは住む人々や働く人々が地域を誇り、子どもたちが将来もずっと住んでいたいと思える場所であることです。また、訪れた人がまた訪れたいと思い、関わる人が自然と多くなるようなまちだと考えます。このまちに存在する魅力ある資源を活用し、人々がまちに誇りを抱ける運動を展開してまいります。

パートナーとの協働

 現代社会が抱える課題は個々の力、あるいは組織単体での解決が難しい複雑かつ多様なものです。このような環境下において、パートナーシップを活用した協働の重要性はますます高まっています。パートナーとの協働は異なる視点や専門知識を融合し、これまでにないアイデアや解決策を生み出す可能性を高めます。また、組織が単独で行動する際に直面するリソースの限界を補い合うことで、よりインパクトのある事業が実現できます。私たちの活動エリアには、青年会議所以外にも地域のために活動する団体があります。彼らとの協働は地域により良い変化をもたらすのはもちろんのこと、信頼関係の構築、社会的影響力の拡大にも繋がり、地域の発展のみならずLOMの成長に寄与します。他団体や市民の皆様とのパートナーシップを通して互いの力を最大限に活かし、より良い地域の実現に向けて運動を展開してまいります。

地域の未来を担う子どもたちに

 子どもたちは地域の未来そのものです。地域のたからであり、これからの地域を担っていくのも間違いなく成長した子どもたちです。子どもたちがまちと自身の明るい未来を想像し、前向きに物事に挑戦できるようになれば、社会はより豊かになり持続可能な発展につながります。今を生きる、そしてこれからの未来を生きる子供たちのために、私たち大人は常に子どもたちの未来を見据え、次の世代のため行動し続ける責任があります。

 塩釜青年会議所はこれまで、多くのその時代に即した青少年育成事業を立上げ、運動を展開してきました。子どもたちを取り巻く社会環境も変化しており、食や物に不自由しない生活を送れている反面、地域との繋がりや、親や学校以外での大人と関わりが希薄になりつつあります。さらに、近年のインターネット、デバイスやSNS等の普及により遠くの顔も知らない友人とも簡単に繋がることができる時代になりました。この進展は素晴らしいものですが、どこまでいっても人は人の輪の中でしか生きられません。今の時代、多くの若者が生きづらさや働きづらさを感じていると言われています。子どもたちが将来幸せに生きていくためには、他者の気持ちを想像できる力と、自信を持って行動に繋げられる体験が必要です。これからの地域を担う子どもたちが幸せな未来を築けるよう、次の世代へ繋げていくためにパートナーと共に考え、運動を展開してまいります。

50周年を迎える塩釜青年会議所

 塩釜青年会議所は設立以来、先輩諸兄姉が絶え間なくその時代に合わせ、活動する地域内に必要とされる運動を展開してきました。その結果、市民や他団体の皆様から信頼と負託を受ける団体として今日を迎えます。2015年には40周年運動指針「希望に満ちた二市三町の創造へ」を策定し、運動を展開してまいりました。この10年においても大きな変化があり、人々の生活様式は大きく変容し、それに伴い私たちが地域から求められる運動の形も変わりつつあります。

 50周年を迎える本年、次の10年を見据え、私たちが活動するこの地域に、そして私たち自身に何が必要なのかを想い描き、新しい運動指針を策定します。これからのまちづくり、ひとづくりに向けて組織の目指すビジョンの発信し、関係諸団体や市民の皆様と共に次の時代に向けて、新たな一歩を踏み出してまいります。

厳格な会議と組織運営

 公益社団法人として厳格な運営を行うためには事業の公益性はもちろんのこと、法令やコンプライアンスの遵守、明確なガバナンス体制、透明性を示すための情報開示、高い倫理規範に準じた活動が求められます。塩釜青年会議所は2013年に公益法人格を取得し、市民の負託と信頼に応えるべく活動を続けてまいりました。本年も地域や社会に貢献する公益社団法人としての自覚と責任を持った運営を行ってまいります。

 私たちはより良い地域の実現のために運動を展開し発信してきましたが、塩釜青年会議所がどのような組織で何を目的に、どのような事業を行っているのかを十分に理解している市民は未だ少なく、認知度の向上が課題です。世界中がインターネットで繋がりSNS等の情報発信の手段が多様化する中で、私たちはまだそれを戦略的に使いこなせてはいません。今後はより広く、効果的に私たちの運動を知ってもらい、応援してもらえるファンを増やすためにもこれまで以上に戦略をもって地域内外に発信をしていく必要があります。さらに、組織内のみならず関係する他団体等との連携を強化することは、私たちの活動をより広く伝え、ポジティブな変化をもたらします。私たちの運動への賛同者が増えることはより良い地域の実現に近づきます。これまで以上に塩釜青年会議所の活動を広く伝播し、塩釜青年会議所のファンを増やしてまいりましょう。

さらなる成長の機会

 宮城県内には11の青年会議所があり、日本国内には671の青年会議所が存在しています。また、世界に目を向ければ120を超える国と地域に青年会議所は存在しています。同じ志を持った仲間たちがどのように考え、どんな活動をしているのかを知ることは自身の成長はもちろん、私たちの地域の発展にも繋がります。このスケールメリットを活かせるのが出向です。出向は誰にでも平等に与えられた機会であり、自身の視野を大きく広げるチャンスでもあります。そこで得た学びと成長は本人のみならずLOMにとってもかけがえのない財産となります。LOM全体が一丸となり出向者への支援を行ってまいりましょう。

 また、本年は宮城ブロック協議会会長を輩出する機会をいただきましたが、このような機会は望んだからといって、必ず得られるというものではありません。塩釜青年会議所のメンバー一人ひとりが、自身のLOMから輩出した宮城のリーダーを支えるという自覚を持つとともに、この機会を十二分に活用してLOMと地域の発展へと繋げてまいります。

おわりに

 青年会議所は人生最後の学び舎である。卒業されて各方面で活躍されている先輩から耳にする言葉です。私は入会当初より様々な人と出会い、多くの学びの機会をいただきました。新たなことに挑戦する度に様々な壁にぶつかり、もうだめだと思ったことは数え切れません。しかし、その度に切磋琢磨する仲間がいたから踏みとどまることができました。支えてくれるスタッフやメンバーがいたから乗り越えられました。導いてくれる先輩がいたから続けることができました。辛いことがあっても、やりきれないことがあっても一人ではありません。苦しい時ほど周りの顔を思い出し、共に成長し、より良いまちを想像し、創造していきましょう。

 Imagination is the beginning of creation. You imagine what you desire, you will what you imagine and at last you create what you will.

「想像は創造の始まりである。あなたは望むものを思い描き、思い描いたものを意図し、最後には意図したものを創り出す。」

George Bernard Shaw