大内 裕太

Yuta Ouchi

公益社団法人 塩釜青年会議所 第51代理事長

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SMILE

~想い、紡ぐ~

 塩釜青年会議所は1975年12月7日、全国で594番目の青年会議所として誕生しました。東日本大震災、新型コロナウイルス感染症の蔓延など、大小さまざまな苦難を地域の皆さん、行政の皆様、県内・全国、そして世界の同志たちと共に乗り越え、先輩諸兄姉から連綿と受け継がれてきた地域への想いを紡ぎ、昨年2025年に設立50周年を迎えました。51年目となる2026年、塩釜青年会議所は新たな一歩を踏み出します。

はじめに

 私は多賀城市で育った、ごく普通の野球少年でした。今となっては古き良き時代となりつつありますが、近所のおじさんやおばさんにも我が子のように指導いただき、振り返ると、私は家族だけでなく地域の皆さんにも育てていただいたのだと強く感じます。そうした野球少年は、地域のために働きたいとの想いから、2011年4月に多賀城市役所に入庁しました。東日本大震災の発災から約3週間後の入庁であり、入庁から2か月間は全国各地から届く支援物資の受け入れが主な業務でした。その後、復旧期には防災担当、復興期には観光担当、コロナ禍では高齢者福祉やワクチン接種に関する業務を担い、行政マンとしてその時々の課題に最前線で向き合ってきました。まちを知れば知るほど、人と関われば関わるほど、このまちが大好きになり、「もっとまちのために」という想いから、2022年5月に塩釜青年会議所(以下、塩釜JC)の門を叩きました。入会後2年目、3年目、4年目と立ち止まることなく、毎年少しずつ背伸びをしながら挑戦し、成功よりも失敗の方が多かったかもしれませんが、塩釜JCの仲間たちと共に一生懸命に走り続けたからこそ、県内各地で志を同じくする仲間にも出逢い、日々新たな学びを得て、まちのために活動できる喜びを噛みしめ、笑顔で活動している今の私があります。

会員拡大運動 ~会員拡大こそ、最大の運動~

 全国的に青年会議所では、会員数の減少が問題となっています。塩釜JCにおいても、10年前の2016年期首人数は53人、2026年は平均年齢35.5歳、経験年数平均4.9年、会員数は40名を下回る人数でスタートとなります。青年世代そのものが減少していますが、必ずしも会員数の減少と比例するものではありません。全国には、青年世代の人口が減少しながらも会員拡大に成功しているLOMが存在します。さらに、そのようなLOMでは会社に属する一般社員の割合が年々増加しており、「JCといえば二代目、会社役員」という従来のイメージをまずは私たち自身が払拭する必要があります。

 私が塩釜JCに入会したきっかけは、先輩への相談でした。「入会を検討しているのですが、いつ入会するのがベストでしょうか。」と尋ねると、「計算するな。今だ。」との一言。その瞬間に入会を決意しました。当時、私は塩釜JCの活動内容の一部は理解しており、先輩は私が描いていた私自身の未来像を理解したうえで、信頼関係があったからこそ、この一言で背中を押してくれたのです。しかし、活動を知らない方に対し「青年会議所とは」と説明するだけで、その魅力は伝わるでしょうか。相手を知らない状態で「きっとあなたのためになる」と伝えても、信用されるでしょうか。目の前の青年はどんな夢を描いているのか、何を目指しているのか。青年会議所には、その夢を叶えるための学びや繋がりがあります。私たちは「聴く」「魅力を伝える」「共感していただく」という対話を通じて信頼関係を構築し、会員拡大運動を会員一丸となって展開し、このまちを想う同志を迎え入れ、このまちのためにさらに力強く運動を展開して参ります。

広報 ~ブランド力の向上~

 塩釜 JC ではホームページや SNS を通じて情報発信を継続して行ってきました。私たちが実施する例会や事業は、構築段階で現状把握や課題抽出など、地域と向き合うことに多くの時間を費やして、地域課題を解決し明るい豊かな社会を実現するために構築されています。この例会・事業の情報をさらに多くの方々へ届けることこそが、私たちの活動や想いを知っていただくきっかけとなり、共感を生む広報に繋がります。

 また、私たちが活動する塩竈市・多賀城市・七ヶ浜町・利府町・松島町(以下、二市三町)は多くの魅力を有しています。広報を単なる事業集客や活動報告にとどめず、このまちに根差して活動する組織として、まちの魅力、まちの笑顔を多くの方々に届けることも役割の一つであります。さらに、私たち塩釜 JC メンバー一人ひとりが広告塔であること、普段の言動が塩釜 JC 全体の印象となることを忘れてはなりません。地域のリーダーとして模範となり、憧れを抱かれる存在を目指し、年間を通じて「発信する広報」から「共感を生む広報」へと進化させ、塩釜 JC ひいては二市三町のブランド力の向上を図って参ります。

会員の資質向上 ~多彩な学びを~

 私は入会当初、担当委員⾧からJC活動の基本を徹底的に教えていただきました。この基本は、JC活動にとどまらず、私の人生の糧となっています。“知らない”ということは不安を招く最大の要因です。入会直後に活動参加への不安を解消していただいたことが、現在まで継続して活動できている私のJC活動の原点であります。

そして、 青年会議所の活動・運動の原点は会議にあります。青年会議所は20歳から40歳までの職種や居住地も違う様々なバックグラウンドを持つ個で構成され、会議では多様な視点から意見が飛び交います。個のさらなるレベルアップが会議の質の向上、ひいては効果的な運動に繋がります。メンバーは家庭や社業がありながらも、貴重な20代・30代の時間とお金を費やしてJC活動を行っています。年間を通じて多彩な研修で多くの学びを得て、知識や経験を積み重ね、人として、さらには地域のリーダーとして成⾧し、家族・会社・地域にその知識や経験を還元できる人財となり、より質の高い運動を展開して参ります。

組織の在り方 ~持続可能な組織~

 塩釜JCは2013年に公益法人格を取得して以来、法人として支出する費用の50%を公益目的事業に充て、運動を展開してきました。基本的には会員からの会費のみで事業や例会を開催しておりますが、近年の会員数減少に伴い予算規模も縮小し、公益比率50%という要件が活動の制約となる可能性があります。塩釜JC定款第3条には、「本会は、英知と勇気と情熱を結集して、会員相互の信頼のもと資質の向上と啓発に努めるとともに、地域社会の健全な発展と福祉の向上に貢献することによって、明るい豊かな社会を実現し、世界の繁栄と平和に寄与することを目的とする」と定められています。この目的は法人格に関わらず不変です。先輩諸兄姉の取り組みにより地域の皆さんや行政からの信頼を積み重ねてきた現在、社会課題が多様化・複雑化する現代のニーズに応えるために、私たちは塩釜JCの未来を見据え、年間を通じて組織体制の検討、法人格について議論し、持続可能な組織運営を実現して参ります。

まちづくり ~このまちが好きだ~

 人口減少社会といわれる中、二市三町でも2015年には約189,000人だった人口が、2025年には約179,000人となり、10年間で約1万人減少しました。進学や就職を機に地元を離れる若者たちは、生まれ育った地域への興味、関心、愛着があれば、必ず地域のために行動する大人へと成⾧し、帰ってきてくれると信じています。コロナ禍以降のICT分野の急速な発達により、働き方も変化し、現地に行かなくても、自宅にいても、いつでもどこでも仕事ができる環境にあり、10年後20年後にはさらにその傾向は進行します。まちづくりはひとづくりです。将来を見据えて“今”まちを想ってくれる人を一人でも多く創ることが求められます。

 塩釜JCが継続事業として展開している塩竈みなと祭陸上パレード。私は塩釜JCに入会してから初めて子どもたちが小さなからだでパワフルに、大きな声を出し、学校ごとに誇りを抱いて踊る姿を見て、まさにまちの文化の継承を体現しており、感動をいただきました。塩竈の確立されたこの文化は必ず継承しなければなりません。昨今の地球温暖化の影響による気温上昇を踏まえ、子どもたちが安全に参加し、保護者や関係機関の皆様が安心して参加させることができる環境を整える必要があります。時代の変化、気温という私たちの力では解決できない問題と向き合い、子どもたちには今年もまちの文化を体感し、“このまちが好きだ”と想いを抱いていただけるよう、持続可能なかたちを創造し、取り組んで参ります。

私たちの運動効果を最大化し、地域により良い影響を与えるためには、行政や同じ想いをもつ諸団体との協働が不可欠です。私たちの想いや活動に対して一方的に理解を求めるだけではなく、相互に理解を深めることが、私たちJCの単年度制の枠を越えた組織対組織のパートナーシップを構築します。

ひとづくり ~豊かな心~

 二市三町の高齢化率は、高い町で40.5%、10年前と比較すると各市町4.3ポイントから8.0ポイント増加しており、着実に高齢化は進展しています。だからこそ、子どもたち、未来への投資が必要です。子どもは地域のたから。10年後、20年後、30年後にこのまちの現場の第一線で活躍し、社会を支えてくれるのが今の子どもたちです。子どもたちには、このまちで、様々な経験を重ね、豊かな心で育ってもらいたいという願いは、地域の大人全員の願いです。子どもたちにとっては、どれだけ多くの経験ができるか、どんな人と関わるか、どんな学びを得られるか、どれだけ成功経験を積めるか、どれだけ失敗して反省するかが、成⾧・価値観の形成に大きく影響し、豊かな心を育むことに繋がります。

 他者を知ることは自身を知ることに繋がります。他文化に触れることで自らとの違いを理解し、尊重の姿勢で他者を受け入れることが求められます。二市三町では、在留外国人が増加し、インバウンドの視点で見ても日本三景を有する松島町には多くの外国人が訪れています。子どもたちが社会にでた時に関わる外国人は今後益々増加することが見込まれます。他者を受け入れる豊かな心を育み、何事にも動じない青少年の育成に取り組みます。

また、二市三町にも大きな被害をもたらした2011年3月11日に発災した東日本大震災、発災から今年で15年となります。東日本大震災以前の大規模な災害と比較すると、画像や映像など鮮明なデータが継承されています。私たち、塩釜JCに現在在籍しているメンバーにおいては、発災当時最年⾧は25歳、最年少は当時9歳でした。言うまでもなく、現在の小学生はまだ生まれていません。私は地元少年野球のコーチを務めており、ある日子どもたちを集めて「東日本大震災って知っているか。」と聞いたところ「授業で聞いた。」「先生が言ってた。」「YouTubeで見た。」などどこか他人事のように感じます。災害における被害への価値観は地域によって異なりますが、だからこそ、この二市三町で起きたことを二市三町の大人たちの言葉で伝承していかなければなりません。子どもにとって一番身近な大人はどなたでしょうか。一番信頼している大人はどなたでしょうか。東日本大震災経験の継承を通して、 “当たり前の日常”がどんなに尊いものなのかを伝え、豊かな心を育んで参ります。

パートナーとの連携

 私たちはこれまでも、行政、諸団体、民間事業者、日本JC、東北地区協議会、宮城ブロック協議会、県内各地会員会議所など多くのパートナーと連携を図り事業に取り組んできました。これからも多くのパートナーと共に活動し、運動を展開することで、このまちに与える影響は大きいものとなります。そして、その連携のかたちをまちの人々にも認知していただくことが、塩釜JCの永続的な発展に繋がり、私たちのこのまちにおける揺るぎない立場を確立します。

 また、泉JCとの交流、友好JCの埼玉ブロック朝霞JC、山形ブロック村山JCとの交流は、先輩諸兄姉が育んだ繋がりがかたちとなったものでもあります。今年度も継続して交流を図り、地域は違えど切磋琢磨する仲間と共に活動に取り組んで参ります。

むすびに

 創立50周年運動指針の基本方針「懸け橋 ~地域に誇りと愛着をもち、安心して暮らせる地域社会を目指して~」に基づく運動を展開する初年度となります。51年目の2026年、先輩諸兄姉から紡がれてきた想いを胸に、本気で地域と向き合って参ります。一生懸命に、がむしゃらに。上手くいかないこともあるかもしれない。カッコ悪くても、泥臭くても良い。笑顔で溢れる未来を想い描き、青年としての英知と勇気と情熱を結集して、笑顔で運動を展開して参ります。