公益社団法人塩釜青年会議所 2021年度理事長所信
公益社団法人塩釜青年会議所
第46代理事長 田中 大輔
はじめに
今から106年前の1915年アメリカ・ミズーリ州セントルイスにて青年会議所の運動は始まり、それから34年の月日を経た1949年、国内経済の充実と国際経済との提携を掲げた東京青年会議所設立から日本青年会議所の運動が始まりました。戦後、極めて苦難に満ちた混沌とした時代背景の中、日本経済の建設に携わる青年相互の啓発と社会への奉仕を通じて、経済界の強力な推進力となり、日本経済の発展に寄与せんとして歩みを始めた日本青年会議所。さらに26年の月日を経た1975年9月、市民の共感を求めて、明るく、豊かな、住み良い地域社会作りを掲げ、51名の志高き同志により設立された塩釜青年会議所。第1次オイルショックの影響により国内消費は落ち込み、我々の活動エリアの基幹産業においては、「200海里漁業専管水域設定」の影響を受け、水揚げが減少し、地域経済が低迷しつつあった中、市民運動の礎となることを願い大きな一歩を踏み出した塩釜青年会議所。そして、2021年、我々は極めて大きな時代の転換期を迎えています。国内に目を向けると、人口減少・超高齢化社会が着実に進行し、さらには新型コロナウイルスのパンデミックにより、約40兆円の経済規模縮小、戦後最悪と言われる大不況を迎え、日本経済、地域経済が疲弊している現状があります。さらには、今まで当たり前にあった日常が当たり前ではなくなり、私たちを取り巻く生活環境が変わろうとしています。今こそ、我々は青年会議所の運動が始まった時代に立ち返り、経済発展に寄与し、地域社会づくりに貢献すべく、使命と責任を担う青年経済人として、自らを鍛え、あらゆる機会を捉え、さらなる挑戦をしていく必要があります。誰もが経験したことのない新しい時代のはじまりだからこそ、明るい豊かな社会の実現へ向けた新たな第一歩として、互いに団結し、青年としての英知と勇気と情熱を持って国家を、地域を、力強く牽引していきます。
地域に求められるひとづくり・組織づくり
日本青年会議所設立から70年、塩釜青年会議所設立から46年を経た今、時代は大きな変革の時を迎えています。時代に取り残されず、時代に求められる存在として、我々青年世代にできることは何か。青年会議所としての役割は何かが改めて問われています。
To provide development opportunities that empower young people to create positive change
(より良い変化をもたらす力を青年に与えるために発展・成長の機会を提供すること)
今こそ、JCI MISSION に立ち返り、青年会議所として一人でも多くのメンバーに成長の機会を提供するとともに、時代の変化や物事の本質を見極め、状況に応じた判断力と目的完遂の確固たる実行力を兼ね備えた一人でも多くの青年経済人を育成することで、国家や地域への貢献に繋がると考えます。不確実で複雑な時代だからこそ、普遍的な使命を根幹に据えながら、今までにあった価値観を再構築し、時代に即した形へアップデートする大きな機会となるはずです。
青年会議所は経営者の集いの場ではなく、単に社会奉仕を行う団体でもありません。人種、国籍、性別、職業、宗教の所属に関係なく、我々の住む地域社会のために責任を持ち、常に学び続け、挑戦をしていく団体です。徹底的な議論に裏付けされた提言や各種事業を通じて、多くの仲間とともに市民と連携をし、運動の先頭に立ち、責任をもって最後までやり抜くことが重要です。決して議論をすることや事業を行うことを目的とするのではなく、常に時代の先を見据え、事業に至るまでのプロセスの中で地域・分野・世代の枠を超えたコミュニケーションを活発に行い、運動を展開していく必要があります。また、メンバー一人ひとりが仕事やその延長線上の学びだけではなく、各種事業を通して幅広い分野に携わり、多様な価値観を学び、個々の活動にフィードバックすることで自身の成長へ繋げましょう。さらに、事業が終われば完結ということではなく、事業を通しての学びを振り返り、その効果を検証し、次の世代へ責任をもって引き継ぐことも我々の大事な役目であり、より良い事業の構築、ひいては、組織活性化に欠かすことはできません。組織は単年で展開していきますが、運動や事業に対する想いや組織内に蓄積されたノウハウは継続的なものでなければなりません。私たちはその時代や地域の先導役として堂々とした行動と大胆な提言を行い、地域に点在している様々な個性を繋ぐ役割を担い、地域にとって唯一無二の組織として持続的に成長し続けましょう。
会員拡大は我々の運動の根幹であり、ひとづくり・組織づくりには欠かすことができません。塩釜青年会議所は毎年積極的な会員拡大を行い、多くのメンバーを迎え入れてきましたが、創立40周年運動指針2020年会員100名プロジェクトの目標値との間にギャップが生じているのも事実です。会員一人ひとりが現状を理解し、拡大運動の本質を再認識し、メンバー一丸となり運動を展開していきましょう。単なる会員拡大のための拡大運動ではなく、メンバー一人ひとりが個人、組織のあるべき姿を見つめ直す機会と捉え、新たな仲間が目指すべき団体に相応しい個人の姿勢や組織の体制であるかを考える必要があります。また、会員拡大を行う中で自身の経験を振り返り、各種事業を通して学んだことだけではなく、組織の本質的な意義を理解し、その意義を堂々と語り、青年会議所と向き合う機会と捉え、自身の成長へ繋げましょう。組織は常に新しいエネルギーを取り入れ、時代に即した形へ変化し続ける必要があります。今まで以上に多くの同志を迎え入れ、地域から頼られ、求められる組織を構築しましょう。
地域経済の活性化に寄与するビジネスの機会の創出
1949年東京青年会議所の設立趣意書には国内経済の充実が謳われ、同様に日本青年会議所の設立趣意書にも経済界の強力な推進力となり、日本経済の発展に寄与すると謳われています。そして、2018年度、日本青年会議所の定款にビジネスの機会が明記されました。しかしながら、国内では、1990年バブル崩壊以降、約10年サイクルで経済的な危機が発生しています。特に新型コロナウイルスの影響により、地方経済の隅々までその影響が及んでおり、青年会議所メンバーの多くが在籍する中小企業も大きな変化の局面を迎えています。厳しい経済環境が続いている今だからこそ、青年会議所の人脈、ネットワークを生かし、ビジネスの機会を有効に活用しましょう。単に目の前の仕事やそのつながりだけではなく、新しいビジネスの在り方や持続的な発展のためのヒントを学び、様々な政策や技術の最新情報、各種セミナーや事業を最大限活用しましょう。地域の活性化には、地域経済を草の根で支える中小企業の発展が欠かせません。地域力再生の鍵は、地域経済の主役である中小企業の再興にあります。青年経済人として、ビジネスを通じて地域経済の活性化に寄与していきましょう。
子供たちの心の豊かさを育む地域教育
塩釜青年会議所には、先輩諸兄が地域の方々と作り上げてきた青少年育成を目的とする事業が数多くあり、今でも地域の貴重な財産、子供たちの成長の機会として根付いています。しかしながら、今日の子供たちを取り巻く環境は少子化、核家族化、情報化等の社会状況の変化を受けて、価値観や生活様式が多様化している一方で、異年齢との交流や地域の大人との関わりが減少するなど人間関係の希薄化が顕著になっています。このような社会環境の変化は、子供たちの意識や行動に影響を与え、自制心や規範意識、または周囲との協調性や自分を認め、他者を尊重する思いやりといった道徳性が育まれにくくなっています。互いに認め合う経験を通して、喜びや自信に繋げ、ひいては自己肯定感を高め、他者を受け入れる思いやりの心を育成する必要があります。地域の子供たちが自らの個性を発揮し、自らの未来を自らの手で切り開き、子供たちを育成し続けられる地域づくりに向けて、私たちが率先して地域の子供たちの成長を促進しましょう。学校教育や家庭教育を基礎としつつ、地域内でコミュニケーションを図り、地域で子供たちを育てる環境を見つめ直し、体験を通して気付きを得る機会を提供し、子供たちの心の豊かさを育む地域教育へと繋げていきます。私たち自身も事業を通じて、家庭教育や自らが関わる地域社会を見つめ直す機会とし、自己肯定感を高め、利他の心を養い、自身の成長へ繋げましょう。また、教育機関、地域の人々や他団体との世代や分野を超えたコミュニケーションを活発にし、メンバー一人ひとりが地域教育の担い手としての自覚をもち、地域が一体感を高めることができる教育環境づくりに寄与します。長年、青少年育成事業に関わってきた公益団体として使命感を持ち、地域の未来をつくる子供たちのために積極的に取り組んで参りましょう。
市民から共感を得る地域づくり
塩釜青年会議所は「市民の共感を求めて、明るく、豊かな、住み良い地域社会づくりに邁進すべく、青年の英知と勇気と情熱をもって、市民運動の礎となる」の創立宣言文の元、46年の歴史の中で時代の先を見据えた取り組みを次々と打ち出し、多くの事業を展開し、地域活性化に貢献してきました。その中には継続的に行われている事業もあれば、他団体に移管し、今なお地域に根付いている事業もあります。継続事業には脈々と受け継がれる歴史があり、その事業に携わられた全ての方々の想いが溢れています。受け継がれる伝統に気概と責任をもち、その意志を受け継ぎ、市民の想いや時代を反映し、新たな価値とともに進化させていく必要があります。しかしながら、新型コロナウイルスの影響により今まで当たり前に行われていた事業ができず、苦しい時期を迎えています。今こそ、我々の事業の真価が問われる時です。地域に散りばめられている点を線に繋ぐ、即ち、地域の多様な個性を引き出す架け橋となり、市民、行政、他団体と連携を図り、多くの方々から共感を得る運動を展開して参りましょう。さらに、世代を超えたコミュニケーションを活発にし、受け継がれる伝統と新たな価値を融合し、新しい時代の一歩に相応しい事業を構築しましょう。また、様々なバックグラウンドを持つメンバーが集う青年会議所の特徴を最大限生かし、自分自身の経験やアイディアを存分に発揮し、メンバー一人ひとりが事業に積極的に携わり、自身の学びの機会としましょう。さらに、事業構築のプロセスの中で市民や各種団体とのコミュニケーションを活発に行い、あらゆる意見に触れ、新たな時代に沿った調和のとれた形を再考する中で、事業を通じての学びと成長を実感しましょう。地域の先導役として、市民や各種団体と寄り添い、連携を深め、2020年度の想いとともに地域活性化に貢献し、新たな時代に相応しい市民運動の礎を築きましょう。
公益法人としての自覚
私たちの活動に関わる資金はメンバーからの会費と私たちの運動に賛同する 多くの方々の想いから成り立っています。塩釜青年会議所は2013年に公益法人格を取得し、法令及び定款に沿った運営を行い、地域から信頼され、求められる団体として歩みを進めてきました。今日の働き方改革やダイバーシティ推進の観点から、メンバーの誰もが活躍できる環境や取り組みを積極的に進めていきます。また、公益性に基づき、各種事業に応じた効果的な手法を活用し、塩釜青年会議所が関わる運動を最大限発信していきます。将来的な組織の在り方を見直し、多くのメンバーの意見を反映した徹底的な議論に基づき、今後の組織体制に準じた定款変更も視野に入れ、組織改革を行います。公益法人として、メンバー一人ひとりが公益団体の一員としての自覚を今まで以上に持つと同時に、組織的なコンプライアンスの確認体制を整備し、公益性とコンプライアンスの徹底に取り組み、組織のガバナンスを強化していきます。
地域を超えた出会いと成長の機会
青年会議所は128の国と地域に約17万人の会員ネットワークがあり、出向や各種大会、事業への参加を通して、多くの出会いと成長の機会があります。また、地域には組織を超えた各種団体への出向の機会もあります。普段の生活や仕事の枠を超えた学びや出会いを経験し、幅広い視野と価値観を得ることで自身の成長へ繋げましょう。また、各種大会では多くのセミナーやプログラムがあり、会員としてのメリットをフルに活かすことのできる機会が数多くあります。私自身も事業を通して、全国に親しい仲間ができ、また国内だけはなく、アフリカを始め海外にも会員のネットワークを通じて仲間がいます。国内、国際の機会を通して、地域を超えた多様な価値観を学び、仕事を含め自分自身の人生の出会いと学びの機会を有効に活用していきましょう。多くの国と地域に跨る青年世代の世界最大のネットワークを活用し、出向や各種大会、セミナーへの積極的な参加により自身の成長へと繋げていきましょう。
おわりに
新たな時代が始まります。
険しく、困難な時代になるかもしれません。
しかし、今までの歴史がそうだったように、きっと乗り越えられるはずです。
私たち青年一人ひとりには無数の使命があります。
時代を担う青年世代として、新たな時代へ責任を持って挑戦しよう。
この先に待っている、今よりももっとワクワクする、あたらしい地域のために。