公益社団法人塩釜青年会議所 2019年度理事長所信

公益社団法人塩釜青年会議所

第44代理事長         石川 夕起子

【はじめに】
 人生に「いつかしよう」という「いつか」が来ないのと同様に、万全な時はありません。何かが起こるときはいつも突然です。また、私たちはいつもお互い様という想いとともに、意識せずとも誰かと支え合いながら生きています。
 2011年の東日本大震災を通じて、私たちは、当たり前の毎日が決して当たり前ではないことを思い知りました。「明るい豊かな社会の実現」という途方もない理想は、より良い明日を迎えるために、少しだけ背伸びをして頑張る「いま」を続けていくことによってのみ近づくことができるのでしょう。
 塩釜青年会議所(以下、塩釜JC)は、県内9番目の青年会議所として、昭和50年9月24日に発足し、翌51年6月6日に全国594番目の青年会議所として、日本青年会議所(以下、日本JC)に正式加入しました。市民の共感を求めて、明るく豊かな、住み良い地域社会作りに邁進すべく、青年の英知と勇気と情熱をもって、市民運動の礎となることを願い生み出された組織、それが塩釜JCです。
 私は本年、理事長としてこの歩みの一端を担う機会をいただいたことに、心から感謝を申し上げます。先輩方から連綿と受け継いできたバトンを、しっかりと次代につなげ、メンバーとともに心躍る素晴らしい未来へ向けて歩みを進めてまいります。

【会員拡大】
 塩釜JCの財産は、所属するメンバー一人ひとりであるといっても過言ではありません。一人でできることに限りがあっても、多くの仲間が集えば不可能も可能になります。人は、これまでどんな人生を歩んできたかによって物事の見方が違い、手に取る選択肢も異なります。多くのメンバーがいるということは、それだけ多くの可能性があるということです。
 40歳で卒業を迎えるJCは、とても新陳代謝のいい組織です。故に新しいメンバーを迎え続けなければ、やがては組織の消滅もあり得ます。近年は、毎年10名を超える新しい仲間を迎えておりますが、創立40周年運動指針で掲げた目標数値には届いておりません。会員拡大は、所属する全てのメンバーで取り組むべき喫緊の課題です。まだJCと出会っていない青年にフィルターをかけることなく、私たちが活動を通じて得たものを、自分の言葉で伝え広めていかなくてはなりません。JCほど職業・性別に関わりなく、本人の意思や意欲によって活動の場を広げ、活躍することができる団体は他にありません。自信をもって、自らの成長とまちの未来を想う青年達に、私たちの方から出会いにいきましょう。そして、新しい時代を切り開いていく、瑞々しい感性と実行力を持った組織であり続けましょう。

【まちづくり・ひとづくり】
 凍える夜の裸参り、港から見上げた大きな花火、暗闇に映える幽玄な薪能。振り返ってみると、私の思い出の多くに、塩釜JCが関わっています。心揺さぶる出来事は人生に彩りをあたえ、湧き上がる思いは大地に染み入る水のように私たちの心にふるさとをつくります。ひととまちをつなぐことができたとき、人々はこのまちに生まれてよかった、これから先も住み続けたい、そんな思いを抱くことができるのではないでしょうか。
 塩釜JCには、それぞれの地域の特性や歴史・文化を活かし育ててきた事業があります。毎年、「誰のためにするのか」「何のためにするのか」と真摯に向きあうことを重ね、その時代に即した事業を展開してきました。これらは多くの市民、行政や他団体の方々のご協力をいただきながら、長い時間をかけ作り上げてきた事業です。いつもと同じ、でも、いつも少し違うという事を積み重ねて進化をさせてきたのです。そこに継続事業の意味があると思います。
 JCは、課題を見つけては種をまき、水を与えて肥料をやり大切に育て、花が咲いたのを見届けたなら、また次の課題に取り組むことを繰り返してきました。その積み重ねの中で、本年、成熟期を迎える事業があります。未来を見据えた準備を重ね、多くの方のご協力を賜り、大輪の花を咲かせましょう。
 一方で、種をまいたものの、なかなか芽吹かせることができずにいる事業もあります。心躍る素晴らしい未来。そこには、ひとが生きていくための原動力とも言える心躍る「ゆめ」があることでしょう。未来を担う子どもたちが、このまちで明るい「ゆめ」を描けるようこの事業を根気強く育てていきましょう。
 また、まちをつくるのはひとです。私たち大人が当事者意識をもって決断をしていくことが、心躍る素晴らしい未来への一歩となります。未来を考える機会を提供してまいりましょう。
 青年会議所の名のとおり、塩釜JCの事業は一連の会議を経て行われています。「このまちに求められていることは何か」また「それらの事業をするために我々に必要なものは何か」を考え、企画・開催しています。そして、事業が終われば終わりというものではなく、それを行なったことによる効果を検証し次の機会に活かしていかなければなりません。そこで、事業の効果をわかりやすく提示する一助として、本年より国際基準となっているSDGsを取り入れてまいります。
 さて、JCでは一般市民という言葉をよく使います。この言葉から想像するのは、顔も名前も知らない不特定多数の第三者でしょう。しかし、一番身近な一般市民を忘れてはいけません。JCの運動は、水面に落ちた水滴の波紋のように広がり伝わっていくものです。私たちにとって一番身近な一般市民=自分の配偶者、家族、会社や友人に、私たちがしていることの意義が伝わらなければ、その先にいる人々にも本当には伝わらないのではないでしょうか。まずは自分が変わり、そして起こした行動がやがては地域の皆様に伝播して、このまちに心躍る素晴らしい未来へと続く変化が訪れるのです。

【出向、他団体との連携、そして資質向上】
 高度経済成長期の日本は、性別によって役割分担をすることで、効率化・高度化を図ってきました。しかし、少子高齢化、晩婚化が進む中、共働き世帯が半数を超え、仕事、家事、育児、介護など人生のあらゆるステージを一人の人間がマルチに担う、そんな時代になりつつあります。20歳から40歳という私たち青年世代は、多くの責任と多様なスキルを求められているのです。
 その中で、JC活動に参加することは、自分だけでなく周囲の人にとっても大きな負担になるのかもしれません。しかし、その負担をクリアすることこそが成長の機会となります。人は人によって磨かれるものです。人生の中で、自分を磨き、学ぶ機会はそう多くはありません。JCには、JCI、日本JC、東北地区協議会、宮城ブロック協議会への出向や各種の大会・事業など多くの機会があります。組織の規模が大きくなれば大きくなるほど、多様な人材が集まります。地元にいるだけでは得られない刺激を受け、普段の活動では学べないものを学び取る機会として、積極的に参加し活用していきましょう。また、活動エリア内外の他団体との関わりを通じ、様々な人に出会い多様な価値観に触れることで得た経験は、私たちを成長させ新たなステージへと導いてくれます。
 しかし残念なことに、入会はしたもののなかなか顔を見られないメンバーも多くいます。JC活動に参加する意義を見つけられずにいる彼らに、ぜひ声をかけ続けましょう。何もしなければ何も得られません。でも、ひとたび行動したならば、何かを得ることはできるのですから。
 JCは黙っていても卒業のときがやってきます。提示される機会の多さに戸惑うこともあるでしょう。でもだからこそ積極的に、青年として明るくたくましく貪欲に自らを成長させ、心躍る素晴らしい未来への扉を開いていきましょう。

【公益法人として】
 公益法人制度改革により2013年に公益社団法人となってから、2015年、2018年と宮城県による定期監査を受けました。今後も引き続き法令及び定款に沿った運営を行うとともに、助言を受けた事項については改善を行い、地域から信頼され、求められるにふさわしい団体であり続けるよう努めます。
 しかしながら、移行申請の際から懸念していたとおり、事業の変更や新規事業の立ち上げが難しくなったと感じています。法令上、公益社団法人は、公益目的事業の種類または内容の変更がある場合、そして収益事業等の内容の変更がある場合には、県に申請し、変更認定を受ける必要があります。この手続きに、半年ほど時間がかかるため、前年度からの周到な準備が必要です。来年、塩釜JCは45周年という節目を迎えます。運動は一年では終わらず、連綿と続いていくものです。心躍る素晴らしい未来へ向けて、単年度制を言い訳にせず、これを機会にどのようにすればできるのか、知恵を集めて取り組んでいきましょう。

【ブロック大会主管】
 2019年、塩釜JCは第49回宮城ブロック大会の主管を務めます。ブロック大会は、宮城ブロック協議会の運動を発信する最大の場であるとともに、私たちの活動エリアの課題に真摯に向き合い、その魅力や可能性の再発見と発信ができる絶好の機会です。多くの市民、行政、関係団体の皆様にも参加及び協力をいただいて、それらを共有し共感を得て、開催終了後も心躍る素晴らしい未来への道がこの地域に残るような持続可能性のある大会を目指します。塩釜JCメンバーそれぞれの力と経験と個性を結集しなくては、この大きな大会を設えることはできません。「長期的な視野で何が大切な事かを判断し、困難な事にも果敢に挑戦する行動力。何にも増して事業を遂行する時のチームワーク。」創立以来続いている塩釜JCらしさを遺憾なく発揮し、みやぎJCの皆様をお迎えしましょう。

【むすびに】
 日本JCの2010年代運動指針には「己を律し、行動するJAYCEE」として、議論で終わることなく実際に行動に移すことの重要性が示されています。2019年はその結実の時です。
 JCは、やりたいこと、できることをする団体ではありません。自分たちが暮らすこの地域にある課題を見つけ、どうすれば解決できるのか、必要とされているものは何かを考え、たとえ困難なことがあろうとも実行する。それがJCです。できない理由はいくらでも思いつきます。できる理由を探してください。そして、共に行動しましょう。もちろん、困ったときは、声をあげてください。膝をつきそうになったなら、手を伸ばしてください。何も恥じることはありません。あなたの周りには、同じ志をもった仲間がいます。
 心躍る素晴らしい未来をつくるため、前を向いて、共に活動していきましょう。