公益社団法人塩釜青年会議所 2018年度理事長所信

公益社団法人塩釜青年会議所

第43代理事長         赤間 竜樹

私たち青年世代には、振り返る時間など与えられてはいないのかもしれません。毎日を懸命に生きて、常に理想を抱き、様々な問題や課題に立ち向かいながら、人と出会い、命を宿し、育み、教育し自分自身が大人へと成長して行くのです。二度と訪れる事のないこの一瞬に、少しだけ背伸びをして世の中を見た時に、急激な変化を実感し、迅速に行動する事にも、少しの変化を逃さず果敢に挑む事にも、私たちに与えられた時間は同じなのです。 今、世の中で起きている問題を見つけ出し、その解決の糸口を見出して行く。それこそが私たち青年に与えられた使命であり、その使命を次代へと繋いで行く責任が私たちにはあるのです。次世代が「愛」に満ちた時代を生きる為に、確かな次代を強い覚悟と情熱で繋ぐ未来へ高い志を持つ仲間と共に、信念を抱き、それを貫く覚悟を持ち、更なる次代へ情熱と確かな愛に満ちたMessageを送り続けて参ります。

【はじめに】
 私は18年前父となりました。決して悪いことも間違ったこともしてもいないのに、世間から「子どもが子どもを育てている」という批判的な目を向けられていることに、強い憤りを覚えていました。同時に何の反論も出来ない自分への苛立ちと、情けなさと、歯がゆさが私のコンプレックスになりました。しかし、ある日そんな私をまっすぐに見つめ、無邪気な笑顔をくれる我が子に救われていることに気付きました。
「この子には未来しか無いのだ。明日も明後日も何年後、何十年後もこの先も生きていくのだ」と。懸命に未来だけを生きて行く我が子の姿を目の当たりにし、私はこの子の父親として負けない強さと信念を持って生きて行こうと自分の心に誓いを立てました。
 そんな私が青年会議所に入会をした当初、「青少年育成」という言葉に耳を疑った事を今でも覚えています。強い違和感を持ってしまったのです。自身が子育ての真っ最中だったり、ましてや子育てをした事のない人たちがどうやって地域の子供たちを教育できるのか不思議で堪りませんでした。違和感を抱きながらも、当時塩釜青年会議所が主管していた「みなとのまち100㎞徒歩の旅」に携わって行くうちに、今までの自分の子育てや考え方、生き方そのものが根底から覆される様な、そんな衝撃を受ける事となりました。それまでの私は「俺は頑張ってきた、懸命に子育てをして来た、俺は間違っていない」と過信し、自信に満ち溢れていたのだと思います。強さと信念を貫くが故に、全てが自分自身の家族の事だけを考えるようになっていたのです。青年会議所という団体は私の価値観、意識をも変えてくれました。青年会議所の活動は世の為、人の為に何をしたらいいのか、地域の子供たちがどんな夢を描き、どんな人生を歩んで行くのか、その為に地域とどの様に関わって行くのかを導き出し、さらに生かされている事への感謝、どうやって生きて行くのかを伝え続けて、次代へと繋いで来たのです。私たちは未来を切り開くための先導者でなくてはなりません。その姿勢こそが、この地域を愛に満ち溢れた次代へと結んでいくと確信します。

「子供たちの未来創造に向けて~子供たちへMessage~」
青年経済人として未来の地域経済の一役を担う責任ある私たちですが、同時に子供を育てる親世代でもあります。近年、インターネット、スマートフォンなどの普及により、生まれたての子供もこのような便利な機能に触れ、様々な情報に触れ、遊び方にも大きな変化が訪れています。私たちも例外とは言えませんが「スマホ依存症」という言葉が世にでてくるほどの社会現象になっている事は否めない事実でもあるのです。親にとっても子供をあやす為にスマートフォン等を利用するケースも多くあると思います。便利な機能を活用し教育の一環として利用する事も効果的だと実証されています。反面、親が「スマホ依存」の家庭は子供も早くからスマホやタブレットに触れる機会が多く、同時に依存していく傾向がみられます。このことは子供たちの成長にとって大きな妨げになっているとも言われております。SNSの中で数多くの人たちと繋がりを持つことに充実感を得る世の中で、一番大切な家族との会話、コミュニケーション等の繋がりが欠けて来ているのではないでしょうか。その事が大きな悲劇を生み出す結果にはなってないでしょうか。子供たちがスマートフォンに一心に目を向け、会話が文字に変わり、私たちは彼らが画面の中で誰と何を、何が行われているのかもわからずに、子供たちが発するMessageを見逃してはいないでしょうか。子供たちは、家庭教育を通して成長し、その過程で人と出会い、地域と関わり、学校教育、地域教育へ、そして、社会へと歩んで行くのです。家庭教育、地域教育、学校教育のサイクルを今一度見つめ直し、私たち親世代でもあるJCが、子育てをする親御さん方と共通認識を持つ機会を提供すると同時に、親子が抱える問題点や課題を導き出し、今後の地域教育のあり方を行政に訴えて参ります。子供たちが明るい未来を創造できる社会の実現に向けて、心豊かに物事に挑戦できる社会を実現していく為には、私たち大人の力が必要なのではないでしょうか。彼らはまだそんなに強くはないのです。一人では生きては行けないのです。しっかりと耳を傾け、手を差し伸べ、命の尊さと生きて行く事の喜びを伝えるため、私たちは子供たちの心にMessageを送り続けなくてはならないのです。親である前に人であり、人である限り、命をつむぎ繋ぐ責任があるのです。

「継続は力なり・魅せる大人の背中~Message~」
団体が継続的に運動を展開し、地域から求められる事業へと発展して来たその陰には、先達の想いや、努力がありました。だからこその現在なのです。昨年第70回の記念すべき年を迎えた塩竈みなと祭も、その歴史があってこそ、今私たちが関わりあえるのです。そのことに感謝しなければなりません。そして、この地域に更なる活気を与え、市民の活力の源となる為に私たちJCが先頭に立って、この事業を継続、発展させて行かなくてはならないのです。その為には、この祭りが市民にとって誇りあるものでなければならないのと同時に、訪れる市内外の人たちを魅了し続けられるように、新たな時代に即した変化を加え、価値のある事業へ進化させていく必要があるのです。
私たちに与えられた使命とは、単に事業を継続し続ける事ではありません。継続によってこの地域の力となる事が必要なのです。幼い頃に見た光景や、それぞれの季節感や風土が織りなす景色に触れながら成長をして来た私たちは、次世代へその想いを継承して参ります。その為には、市民から我々の運動に理解を頂き、市民の意識を変える事で、求められる有益な団体とならなければいけません。我々だけでは成しえないこれらの運動を、地域市民、各行政、他団体の方々と共に未来へ向けた力に変えて参ります。また、明るい豊かな社会の実現に向けて運動を展開している私たちには、創造の力と確かな歴史認識を合わせ持つ必要があります。私たちの活動エリアは、自然と歴史に恵まれております。「歴史のまち」多賀城を舞台に開催をしている「アラハバキの灯」も今年で第9回目を迎えます。地元小学生によって行燈に描かれた思い思いの未来へのメッセージが輝きを放ち、幻想的な空間を演出します。地域に眠る「たから」を保存するだけでなく、活用する事で、参加する大人や子供たちに確かな歴史を伝えてゆく機会と致します。私たちは未来を切り開く、歴史を支える使命的な課題を負ったJAYCEEであると同時に、このふるさとを愛する者であり、このまちの市民であるのです。人は決して一人では生きていけない。支えあうことでこの世は成り立っています。集った仲間の思いを知恵に変え、育成事業に果敢に挑む背中が子供たちへのMessageとなるのです。「このまちに生まれて本当に良かった」と思える次代に向けてのまちづくりと、明確な未来を創造できるひとづくりを実現して参ります。

「地域に可能性を秘めた人材へ~Message~」
私は入会当初この団体の魅力を見出せずにいました。『何が必要なのか、何をしたいのか、何になるのか』。と疑問を抱きながら、月日だけが過ぎて行きました。決して優等生ではなかった私は、「こんな団体いつでも辞めてやる」とまで思っていたのです。
「自分には向いてない」「そんな暇なんてない」と気が向いた時にだけ委員会活動に参加し、愚痴にも似た事ばかりを言っていた私に、当時一緒に活動していた先輩から「誰一人自分の仕事に手を抜いている者はいないし、誰一人適当にこの団体の活動をしている者などいない。やりもしないでそんな事ばかり言っているなら辞めたら」という言葉を頂きました。私はJCの魅力を見出せなかったのでなく、知ろうともせずに、自分自身が壁を作っていたのです。
近年、塩釜青年会議所では会員拡大に成功し、多くの仲間を迎え入れております。2015年に掲げた創立40周年運動指針に基づき、2020年に100名を超えるLOMになる為に、日々会員拡大を行っております。この地域にはまだ出会っていない大いなる可能性を秘めた青年たちが多く存在する筈です。我々が行う運動に自信を持ち、正面からぶつかり、懸命に話をし、思いを伝えて参りましょう。その一方で入会する人の数に捉われすぎるが故に、入会した仲間の魅力を引き出せないままに孤立させてしまい、時に退会に至らせてしまう傾向もあります。全体の会員数に対し、出席率が平均50パーセントに満たない例会、事業も現にあるのです。出席をする意義や会員としての責任、立場の重要性を伝える必要があるのではないでしょうか。新しい仲間たちに正面から向き合って懸命に成し遂げる姿勢を見せているでしょうか。まずは、己自身が変わらなければなりません。修練・奉仕・友情の理念の下で他が為に達成した時に、我々は本気で共に涙を流し合う最良の友と出会うのです。活動の魅力を伝え、それぞれの力を引き出す事も、我々に与えられた使命であり、この地域の明るい未来に向けた一歩ともなるのです。私たちは、新たに迎え入れた仲間に、そしてまだ出会って居ない仲間に先輩方のような姿勢と威風堂々たる背中でMessageを放ち続けなくてはならないのです。

「防災意識高めるまちの実現。市民へ~Message~」
東日本大震災、我々の活動エリアであるこの二市三町も、甚大な被害を受けました。そんな時、「子供たちに笑顔を」と全国から集う人々、「市民の生命と財産」を守るため昼夜を問わず活動を続けてくれた自衛隊や地元の消防団の方々。我が身を顧みず、懸命に、ただ前だけを見て活動してくれた彼らのその姿は、私たちに大きな励ましと、希望を与えてくれました。同時に子供たちの心に「感謝」という思いを宿してくれたのです。「地域の子供は地域で育てる」そんな精神と日頃の行動がこの様な効果をもたらしたのだと思います。
多くの人々に支えられ何とか震災以前の生活を取り戻しつつある現在、震災を経験していない子供たちが、義務教育を受ける世代となりました。今一度、防災意識を高め、市民、行政、JCが三位一体となった形で、またいつ訪れるかもわからない災害や有事に備え、防災意識、安全意識を高める必要があるのではないでしょうか。
子供たちが「安心して暮らせる国、日本」の確立のために、私たち大人が防災を学び、子供たちが地域の大人に守られているという実感が持てる「当たり前な日常」を市民、行政共に構築して参ります。そして、我々JCが行う運動を通して、有事の際には大人が迅速に行動し、まずは身近にいる子供たちの安全の確保に尽力するといった意識変革の出来る場を提供致します。親が働きに出ていて、一人で留守番をする児童の数は増えているのが現実です。災害時に親と離れている不安な状態にある子供たちへ、近くにいる大人からMessageを送る、そんなまちを現実のものとしていきたいのです。

「活力ある地域へ向けて先達からの~Message~」
明るい豊かな社会の実現に向けて必要なのは、活力ある地域企業の存在です。地域企業が元気でなければ、雇用は生まれず、若者は都心へ職、住居を求めこの地域から離れて行くでしょう。私たちが生まれ育ったこのふるさとでは漁業、農業、物作りを中心とした産業が盛んに行われて来ました。人々に笑顔と豊かで生活を営んで頂きたいという先達の願いがあったからこその現在です。私たちには、地域とその歴史を先達の想いと共に世に継承していく責任があるのです。その思いは現在、様々な形で各所に広がり、青年がそれぞれの活動を通して全国で伝えています。団体こそ違えども、「ふるさとをよくしたい」という思いに何も変わりはないように思うのです。そんな志を持った青年たちの、全員一致での団結力なくして真の地方創生はなしえません。そして、我々JCメンバー一人一人がより深く、我がふるさとの魅力を探求し、地域を新たなステージへ導く一助となって参ります。
先達からMessageを受け継いだ青年世代であり、この地域に暮らす青年経済人でもある私たちこそが、強い信念と志を併せ持ち、新たな時代を切り開いて行かなければならないのです。歴史、文化、風土が有るからこそ生かされている私たちは、今の時代に即した変化を加えた運動を世に拡げ、二市三町内外から集う方々へ、その魅力を発信して参ります。

「新たなひととの出会い~Messaege~」
私たちには平等に与えられる機会があります。生まれ育った二市(ふる)三町(さと)だけに留まらず、JCには、ブロック協議会、地区協議会、日本青年会議所という、地域から世界への扉があり、一人一人にその扉を開くチャンスが与えられています。本年強い覚悟と情熱を持って一人の仲間が果敢に挑戦し、その扉を開きます。出向で得た学びや気付きを必ずやLOMに持ち帰り、私たちの財産にしてくれるでしょう。
また、他のLOMとの交流を図り、新たな仲間と出会う機会を提供します。私たちは刺激しあい、認め合い、励まし合える本当の友と出会うのです。LOMとLOMの垣根を越えた友情を育みながら、新たなステージへと挑み、互いに成長して参りましょう。青年会議所で多くの仲間と出会い、未来へ向けたMessageを共に送り続けて参りましょう。

「メンバーへ送る~Messaege~」
私たちに与えられた時間は儚くも失われていきます。しかし、40歳までの限られた時間の中で得た経験や、知恵、度胸は卒業を迎えた後、活かされていくのです。その時間で何をしたかがこの青年会議所に入会をした意義となるのです。頼もしい背中を見せてくれた先輩メンバーに感謝と敬意を表し、今度は私たちの背中を通して後輩へと継承できるよう、誇りと知性に満ちたJAYCEEであらねばなりません。
この団体の活動や魅力に価値観を見出せずに、なんとなく時間だけが過ぎて行く者。他が為に何かをする事に強い違和感を抱く者。私は、それぞれの価値観があって良いと思うのです。多様な仲間が集い、目の前で起きている問題に取り組み、課題を見つけ出し、それらを解決することで得た知識を、知恵に変え、それを血肉として糧として、目的に向かって運動を展開して行くのが我々の役目なのです。それを成し得たとき、あなたは強くなるのです。日々の生活の中で、会社での責任、役割、子育てなどに忙殺され、自らを顧みる余裕などないかもしれない。誰も教えてはくれないのです。だからこそこの団体でしっかりと自分の足元を固め、自分自身を見つめ直す、そんな機会として頂きたいのです。そして過去の自分を振り返り、誇りと、自信に満ち溢れた雄姿で卒業を迎え、これから迎える半生を悔いなく生きて頂きたいと願っているのです。

「初志貫徹」立てた志を貫き通す強さ
私たちの志がどのような形で、いつ、表に現れるのか誰にも知る由もないのです。決して諦めず、弱音を吐かず、貫く姿勢がこの地域を明るく豊かにして来たのではないでしょうか。迷い、悩み苦しんだ時は必ず、後ろを振り返って見て欲しい。そこには必ずや仲間の存在がある筈です。私たちはそうやって常に変化のきっかけを作り続けなくてはならないのかもしれません。だからこそ私たちは市民一人一人の意識を変革し、この地域に足跡を残してくることができたのです。強い覚悟と情熱を抱き、次世代への「愛」に満ちたMessageを送り続けなければならないのです。