この地域まちに身を置く人々が幸せであれと、そして未来を担う子供たちが幸せであれと心から願い、私たち青年が自らの使命に向き合うならば、きっとその地域まちは素敵な地域と呼ぶことができるしょう。

 不安と混沌とが覆っているこの社会で私たち青年が今なすべきことは、各々が持つ個性を磨き、その輝きを灯ともしびとして、家庭を、隣人を、仕事を、地域を、国を、世界を照らし、夢や希望を導き出すことではないだろうか。志高き青年が持つ「灯ともしび」、即ち利他の精神「我が身のことはさておいて、他のために尽くす心」をより輝かせるために、私たち青年は精一杯の「自分づくり」から始めなければならないのです。

1975年5月

 36年前、約30名の志高き若獅子がこの地域に集まり、「オレたちの手でこの地域を素晴らしいものにしよう!」と拳を天に挙げました。それから、幾多の困難を乗り越え、翌年の1975年5月に塩釜青年会議所は産声を上げたのです。察するに、行き詰まったことや、諦めかけたこともあったはずです。しかし、若獅子たちは屈することなく、この地域に青年会議所(JC)を設立させ、それから35年、百数叙シの英知と勇気と情熱がその精神と運動を今日へ繋げてきたのです。35年間、その年度によって手法は変われど、いつの時代も塩釜青年会議所は、自らに修錬を課し、それを乗り越えながら愛するこの地域に貢献するという基本理念を守り続けてきたのです。

 今年、設立35周年という節目にあたり、諸先輩方が繋いできた精神を再認識しながら、挫けそうな心を曲げて己の心を強くし、私たち塩釜青年会議所にしかできない運動を展開していくことこそが、諸先輩方への恩返しであり、温かく見守り続けてくれた地域への恩返しであると強く感じます。

 節目とはただの通過儀礼ではなく、過去・現在・未来の「ひと」を繋ぐ特別な時空であり、私たちはその瞬間に立ち会える幸せに感謝しなければなりません。

地域に生きる

 私たち青年会議所が目指す社会の在り方とは、一人ひとりが自らの生き方に誇りを持ち、お互いがそれに敬意を払うことに他なりません。それぞれの灯ともしびでお互いを照らし、輝かせる社会の実現こそが、この地域の明るい未来なのです。

では、現実はどうなのか。物と情報が溢れ、凄まじいほどの科学技術の進歩によって私たちは便利な生活を送っております。「もっと豊かになれ、もっと便利になれ」と願い、それを幸福と信じ、実現してきた社会に身を置きながら、一方では年間3万人以上の自殺者がいる現実。報道で目にするのは目を逸らしたくなるような悲惨な事件の数々。17分に一人のペースで自分の命を絶つ人々がいて、理解不能な凶悪事件が頻繁に発生し、子どもが一人で外を歩けないほど危険な社会になってしまったのは何故なのだろうか。私たちは望んだものは全て手に入れたはずではなかったのか。誰もがこの知的矛盾と道徳的破綻の中でもがいており、「何とかしなければ!」と感じているのです。そんな状況で私たち青年会議所(JC)がすべきことは、行政と市民としっかりと手を携えて、この地域を、この地域に携わる人々を輝かせることなのです。この行政・市民・JCの連携は、決して一方通行であってはならず、お互いのことを深く理解しあいながら、ちょうど樹木を育てるように、長いビジョンで地域の精神性を磨かなくてはならないのです。本年も私たち青年会議所(JC)は、運動の発信者として、そのような覚悟で事業に臨むべきなのです。

塩釜JCには「塩竈みなと祭陸上パレード」、「みなとのまち100km徒歩の旅」といった継続事業があります。いずれもひとづくりであり、まちづくりであり、青少年育成であることは言うまでもありません。今年で塩竈みなと祭は63回を数え、100km徒歩の旅は第6回を迎えます。継続事業には歴史があり、今まで携わった諸先輩方や地域市民の思いがたくさん詰まっております。大切なのは意志を受け継ぐことと進化させること、ただ単に今までの積み重ねを踏襲するのではなく「今」を反映させた内容でなくてはなりません。

また、全ての事業に言えることですが、大切なのは「誰がやるのか」です。青年会議所(JC)の会員の多くは経営者であり青年経済人です。自分の担いの中で、自分にしかない発想、自分にしかできないことを事業の中に盛り込み、その歴史に名前を刻みこむという意識が、青年経済人としての成長の一つだと考えます。各々の持つ個性を他たのために大いに発揮する素晴らしいチャンスが青年会議所には、そしてこの地域にはあるのです。

美しい星

 全ての命の母であり父である地球が今、悲鳴をあげています。砂漠が広がり、氷が解け、空に穴が開き、サンゴが白くなり、砂浜に囲まれた国が消えつつあるのです。目を閉じ、耳を塞いでもこの現実からは逃れることができないのです。

近年、環境に対する意識が高まり、国や地域で様々な取り組みがなされております。1997年に京都議定書が決議されました。これは、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの排出を先進国が率先して削減しようという内容です。しかし、今日こんにちの研究では、温室効果ガスと地球温暖化の因果関係を疑問視する報告もあり、真まことの環境保護のための様々な方法が検討されております。

環境保護運動の本質とは何でしょうか。取り組みが始まってまだ日が浅い現在、大切なのはやはり意識ではないでしょうか。一人ひとりが「きれいな地域であってほしい、きれいな国であってほしい、きれいな地球であってほしい」という意識を日々の生活の中で、目に見える形で実践することが大切なのです。

環境について考えるとき、私たちはより広い視野で物事を見なければなりません。この地域の環境が日本の環境を作り、世界の環境を作るのです。その逆もまた然り、遠い国の環境が日本の環境を作り、この地域の環境を作るのです。私たちは一人ひとりが独立した存在ではありますが、世界中の人々と繋がっているのです。海も空も世界中に通じており、一つの破壊が世界に影響を及ぼすのです。私たちが美しい環境を未来に繋ごうとするならば、地域だけでなく、国、地球規模での意識を持たなくてはならないのです。

 JCの事業においても、環境保護の視点を忘れてはならず、積極的に取り入れ、長期ビジョンで問題意識の輪を世界に広げていくことが大切なのです。そして、大切なのはその運動を止めないこと。私たちは、かけがえのないこの地域を、この国を、この星を愛して止まないのですから。

運動を伝える生き方

 人に何かを伝えようとするとき、大切なのは何でしょうか。話術も大切です。事業の内容も大切です。身なりの清潔さも大切でしょう。しかし、最も大切なのは、その人の物事に向き合う姿勢、つまり生き方ではないでしょうか。私は、最終的に人は生き方でしか何も伝えられないと信じています。裏・表(うらおもて)のある生き方、人が見ている時と見ていない時で変わってしまう生き方では説得力などあるはずがありません。その時の誘惑に簡単に負けてしまう、容易に変わってしまう生き方に誰が共鳴するでしょうか。

 地域に対して私たちの運動を伝えようとするとき、いかにその運動が素晴らしいものであっても、私たち自身の生き方が説得力のあるものでなければ賛同は得られないでしょう。もっと強く言えば、説得力のない生き方をしている者が発信する運動は偽物です。私たちの運動が本物の運動であるためには、私たちが本物の生き方をしなければならないのです。

 私たちの運動に説得力を持たせるためには、JAYCEEであるときも、家庭人であるときも、企業人であるときも、地域市民であるときも、いつだって変わらない、曇りのない生き方を示し続けていかなければならないのです。

公(おおやけ)の利益のために

 2008年12月、新公益法人法が施行され、JCはその大きな波の中で様々な選択を迫られております。「JCは公益団体か」と問われれば、私は自信を持って「そうです」と答えます。「JCは研修団体か」と問われれば、やはり自信をもって「そうです」と答えます。私たちJCが行う事業の目的は、常に地域が輝くことを目的とし、未来のこどもたちが幸せであれと願いを込めたものでなくてはならず、35年間、そのような思いで運動を繋いできました。このことだけでもJCが一点の曇りもない公益団体である証なのです。その中でお互い切磋琢磨し、同志と共に自分を磨きあげ、地域のリーダーになるのです。

 2009年度では公益法人格取得のためのプロジェクトチームを編成し、取得に向けて様々な研鑽けんさんをしてまいりました。公益社団法人取得の目的は「取得すること」ではありません。はっきり言ってしまえば、基本姿勢は今まで通りで構わないのです。事業を企画運営する中で最大限の努力をし、皆で知恵を出し合い、力を合わせ、目的を達成する。その過程ではつらいことや苦しいこともあるでしょう。しかし、それを乗り越えることがその人を成長させ、仲間や地域との絆を強固なものとするのです。JCは紛れもなく公益団体であり、研修団体なのです。

 青年会議所での活動が生涯の友をつくり、この地域への深い愛情を育むのは、公おおやけの利益のために自らに修錬を課し、その度に壁を乗り越え、成長するからであり、それが一人ではなく、仲間とともに成し遂げられるからなのです。私たちはそのようなチャンスに巡り合えたことに感謝しなければなりません。

全国の同志たちと

 我が国にはLOMと呼ばれる各地青年会議所が709あります。約4万人の会員が各々の地域で運動を展開しております。そのLOMは日本青年会議所とその協議会によって繋がっており、それらは出向によって支えられております。私自身、日本青年会議所、東北地区協議会、宮城ブロック協議会への出向経験があり、多くの勉強をして参りました。そこで行われる事業はもとより、そこでの人との出会いは何物にも代えがたく、ありがたいものであります。面識がなく、強烈な個性を持ち合わせた者同士で議論を重ね、汗をかき、一つのものを創り上げる充実感はなかなか経験できるものではなく、出向での経験が今の私に与えた影響は計り知れないほど大きいものと感じております。

出向は自分のためであり、同時にLOMのためでなくてはなりません。どちらかのための出向であってはなりません。出向するからにはひとまわり成長して、そしてその成長した姿でLOMのため、つまりこの地域のために汗を流す、そのような繋がりのある出向でなくては何の意味もありません。

 2010年度もたくさんの出向のチャンスがあります。是非とも未知なる航海を恐れずに日本・東北・宮城に積極的に繰り出しましょう。実際に会話する機会は少なくとも、あなたの人生に影響を与える人物に出会えるかもしれません。出向とはそのような魅力を秘めているのです。

ともに生きる〜輝く未来のために〜

 私たちは独立した「個人」です。しかし、全てから切り離された「一人」ではありません。家族であり、親戚であり、同僚であり、同じ地域に住む隣人であるといった、何かしらのご縁で繋がっている存在なのです。一人ひとりがお互いを敬い、また、自己を敬う社会を実現するためには、全ての人がお互いの輝きを大切にするという意識を持つことが大切なのです。

ともに泣きましょう。ともに笑いましょう。ともに厳しくありましょう。ともにやさしくありましょう。ともに情熱を燃やしましょう。ともに温もりを感じましょう。私たちは縁あってこの地域で生まれ、この地域で育ち、この地域で出会ったのですから。

2000年代運動指針はこの言葉で結ばれています。この運動指針を受け継ぎ、本年、新たに2010年代運動指針が発信され、新たな10年が始まるのです。本年は、2000年代と2010年代を繋ぐ年であり、新たな時代への懸け橋となる年であります。まちづくり・ひとづくり・青少年育成に代表される私たちの発信する運動はイベントであってはなりません。過去・現在・未来と繋がる運動でなければなりません。受け継がれてきたものを、この10年で一人ひとりの

灯(ともしび)をもって更に輝かせ、そして次の10年に繋ぐ。そんなスタートにふさわしい2010年度とするためにも、全ての人々と手を携えて、しっかりと進むべき方向を見据え、揺るぎなき信念を胸に刻み、青年らしく颯爽と歩んでいきましょう。